メーカーさんの気持ちを考えてみようシリーズ。
さて、ガンプラブーム期から今のガンプラまで知る年代層である私の視点で「今、バンダイがガンプラをどんな風にして欲しがってるか」考えてみよう。
どんな製品でも製品の進化の方向性を見たらメーカーが何を志向しているかは大体読み取れる。ガンプラは1980年代にほんとアホほど売れたのだが、今はあの当時の様なガンプラ…接着剤必須、パテ必須、塗装大前提みたいなの…は売ってない。もしもあの大ブーム時代の環境が是認されてるなら今の様な色プラは生まれて居ないだろう。
今は接着剤不要、多色成形が進み「接着剤も塗料も不要で、シール貼ればそこそこ鑑賞に耐えるガンプラが完成する」様になっている。ここから見るに、ガンプラブーム後の停滞期を経験したバンダイは「手軽に見栄えのするキットを生産し、誰にでもカッコいいガンプラを手にして欲しい」と願っていることが推察される。つまりガンプラ小僧が高年齢化した結果として停滞した?状況に対し、若年層開拓や高齢化したおっさん呼び戻しの為に手軽さが重要であると。
特にプラモ関係では欠かせない「シンナー臭」はガンプラに限らず大問題だった。おじさんらの時代ではシンナーちゅーのは「不良が校舎裏で吸引してラリパッパする」のと密接に繋がったアイテムであり、プラモ作成がきっかけで不良化するとか大真面目に語られてたり、脳が萎縮するだのアホになるだの散々だったのである。一番ガンプラとかでシンナー(結果的に)吸ってた中学時代、私偏差値で70超えだったんですが…(換気してやる分にはそんな深刻な影響無いべな…w)
塗料と接着剤の根絶。或いは可能な限りの排除。
現状タバコなどに対する社会の規制を見ていると、悪臭であり健康に被害を与えるシンナーは、野放しにしておくと社会から規制される可能性が極めて高い。ガンダムマーカーなどどーしてもやらねばならない細部塗装に非シンナー系溶剤(アルコール系)が用いられているのもこの辺だろう。彼らは基本、シンナーを使って欲しくないのである。
更に最近、ガンプラビルダーズだっけ?からビルドファイターズシリーズ、そしてトライ経由でダイバーズとガンプラ販促アニメにおいて、改造というヤツが主題に取り上げられている訳だが、注目して欲しい所がある。本項投稿直前に放映されたビルドダイバーズでは折れた関節部の修理に「軸に穴開けて真鍮線を通して瞬間接着剤で接着」しているのだ。シンナー系接着剤使って無いのね。
思えばビルドファイターズでセイ君が接着剤塗ってるの見たことないよーな。また、彼がエアブラシで塗装しているシーンも見かけない。つうかシンナーの匂いがしそうなシーンが無くないか?
これは当然の話で、ガンプラが今必死にシンナー遠去けてるのに、改造や仕上げでシンナーを使う様ではバンダイの目指す方向性に反してしまうのだ。セイ君はプラ板の積層加工してるから溶剤系接着剤を使っていると考えるのは自然であるが、この事実は巧妙に外されている。ていうか、サフ吹いてキズチェックとか、吹いたの組み立ててニヤニヤしたりサフ萌えーとか言ったりしないのだ。
最近バンダイが入れ込んでるフミナ先輩にしてもですね、モデラーなら爪先にサフの灰色だの爪のキワに塗料が付着しているだの、服や髪にプラの削りカスが付いているのがリアルというものであろう。
しかしそんなん見たことないわw
現状において、以上のポイントから「ガンプラからシンナーを遠ざける」というのは大変重視されており、ぱち組、無塗装。改造するにしても切削かパーツ単位の組み替えか、デコパーツを瞬着辺りで接着程度、塗装なんてとんでもなく、可能ならトップコートも吹かせたくない…というのがバンダイの本音ではなかろうか。ガンダムマーカーをエアブラシにするシステムの販売もあった訳だし、次にはガンダムマーカーのつや消しとか出してくるかもしらん。(今唯一シンナーから離れられない部分だし)
この辺から考えると、ゲート処理は確かにガンプラ説明書に「二度切りしましょう」と書いてあるからバンダイ側も推奨というか、綺麗な仕上がりや組み立ての関係上干渉を防ぐ意味で推奨してるかもしれないが、全面塗装は余り推奨されておらず、マーカーによる部分塗装や墨入れ程度が想定で、改造はパーツ単位での入れ替え推奨なのではないかと推察される。
勿論、どの分野でもトップ層は変態加工するのが常であるから除外するにしても、ウチで言うならこの辺がバンダイの想定する「普通のガンプラ〜一般層が手を入れたガンプラ」なのではないか。
接着ほどんどなし。部分塗装と墨入れ、合わせ目はデザインナイフとヤスリで処理。
接着と腰部延長したが基本素組、全体的に磨いてシャープ化。部分塗装。何もトップコートなし。
この程度で満足し、月に2〜3個作るぐらいがバンダイの考える「普通〜少しこだわりのあるガンプラ好きの作品」なんじゃないかなと。
また、逆に「普通のガンプラ好き」に対してゲート処理以上の「工作を要求」するのは、「バンダイの推進している普及政策」には反しているかもしれない。超絶技巧取得や世界選手権に出たいと考えている前提なら話は別だが、少なくとも手間かけて製作頻度が下がるなら、確実に売上阻害要素になってしまうし。
勿論バンダイの施策に寄り添う必要は全く無いが、このバンダイ擁護発言が多い私でさえ「配慮は多少するものの」、ココは良くねぇだ(出来が気に食わないから)改造するとか書くわけだ。彼らの意図を理解しようとする事とガンプラ作成で彼らの意図から離れて好き勝手するのは両立し得る。そしてその両方がバランスよく発達した時に生産的な批評や新しい視点が生まれるのだと愚考する次第である。