フルアーマーガンダム7号機の系譜


我が家設定で。

フルアーマーガンダム7号機は0079年に生産されたガンダム7号機のフルアーマープランだが、最終的に軍首脳部がジムの大量投入戦略を選択した為にプラン自体が一回頓挫している。この際に先行試作されていたガンダム7号機は内部構造や機構をGS系統ジムに寄せた形で0080にロールアウト、ガンダム戦記での活躍に繋がって行く。

で、意外と強かった(結果論)

0079の年末にも重装型ジムの計画自体はあり、対ジオン戦での戦勝によりMSを宇宙で大量生産できる様になった事、戦中は割と地球で組み立て宇宙に飛ばすという非効率的な事をやらざるを得ず、ジムは軽量でなくてはならなかったという縛りがなくなった事、軽戦高機動に振ったジムコマンド系統の性能を活かしきれるパイロット養成がかなり難航した事…様々な条件が重なりフルアーマーガンダムというプラン自体は量産検討される程度にはなっていた。

そこに0081年1月、アサノ大隊にて将来的な拠点制圧ユニット編成の為の新砲撃システム評価機のコンペティションが行われる。多数の攻撃オプションを持ち、それらを高いレベルで管制する処理能力の高さが評価され、フルアーマーガンダム7号機は試験量産される事に…ならなかった。機体は評価されたものの整備性や兵站維持の観点からジムシリーズ(特にジムコマンド)との高い互換性が要求されて、以降このモデルはフルアーマージムとして開発が進む事になる。ガンダムとしての量産が否決されたのは地球連邦軍の主力MSがジムシリーズだからであり、主力を強化せずにガンダムなどの少数しか存在しない機体を強化するのは普通に考えておかしいからである。F-15の近代アップデートは理解できるがX-29改造するバカは居ない。その意味でフルアーマーガンダム7号機は正しくジムの為にフルアーマープランのテスト機になったのだ。

0081年4月より12機のフルアーマージムの調達が認め…られなかった。これは戦後復興予算のかなり高騰したのが遠因であり、主計局が難色を示した様である。ただしジムコマンドとの高い互換性を維持したことが功を奏し、運用中のジムコマンドから共用コンポーネントを流用して「近代アップデートの一環であるなら」という条件付きで12体の調達に成功する。

新火力管制システム「コンサートマスター」はかなりの高性能を発揮できたので、更なる調達が認められた。その後に連邦軍内で派閥争いが勃発し、あれやこれやでフルアーマージムの評価部隊であったアサノ大隊は解散、再編の憂き目に遭う。そのゴタゴタの最中先のコンサートマスターによる連携砲撃機能がとてつもなく高性能であることが露見してしまう。

そも、MSの発展において最大の問題はミノフスキー粒子による誘導兵器の陳腐化である。それ故に有視界戦闘に傾倒せざるを得ず、MSという兵器体系は隆盛を極めた。それはつまり誘導兵器や長距離高精度射撃がなんらかの形で有効になった場合MSの優位性が失われるという意味を持つ。その意味でコンサートマスター機能搭載機はジムという兵器を用いた戦略「数押し」と極めて相性が良い…数が集まれば集まるほど視界が開け、命中率や敵行動予測が精緻さを増し、軍拡に正当性を与える。

それによりパイロットの練度が高くなければならないという制約も低くなり、少数エリートパイロットによる軍備削減計画は必然性を失う。フルアーマージムが廃案になったのは時代の潮流から外れてしまったという部分が非常に大きい。

「巨大化し続ける化け物の様な群体(軍隊のタイポではない)」というコンサートマスターの問題解決策として、制御機の無い完全フラットなネットワーク部分に手を入れた管制システムは、ティターンズ台頭後秘密裏に研究が進められた。話は簡単だ、実はとんでもなく高度なコンサートマスターの「主機が無いままクラスタリングを行い、一つのプログラムを実行できる」というシステムを旧来のサーバー/クライアント式の分散処理に作り変えれば良い。

実装は大変だ、コードは全て一から書き直しになる。そして主機のCPU処理は一気に複雑化し、中隊規模(12機)での連携支援を行う為にはコンサートマスター時の3倍近いスレッドが必要となる。

IMSIS (Inter-MS Infomation System)と名付けられた新管制システムは当時水準でもかなり高性能であったフルアーマーガンダム系の火器管制用コンピュータを2台並列で搭載し、更に管制時は空間機動や火器管制サービスを停止せざるを得ないという常識外れな物となってしまった。宛ら旧世紀のAWACSである。

IMSISはデータリンクを構築し、リンク内のMSの画像データおよび各種センサーからの周辺情報を統合、戦域内の1m立方以上の物体の位置/ベクトル情報をリアルタイムで監視し、各子機に配信する。これによりリンクした各機体は監視域内の物体に対して高精度のFPS(Field Positioning System GPSの戦域(フィールド)版)データを用いた管制射撃を行う事が可能になる。

この為、IMSIS主機は極めて断首作戦に弱い。MS戦闘の性質上管制機と言えども戦場に突出せざるを得ず、動かないMSは的にしかならない。この問題を解決(してない様に見えなくも無いが…)する為に、フルアーマージムへの変更以来伝統的にジム頭であったこの系列機の中で数年ぶりに「虚仮威し」としてガンダム7号機の頭が搭載された。

試験機のみの生産である為、IMSIS機の型番はRGM79-I という何の捻りもないものになっている。但し型番秘匿(ジムである事がバレない様に!)外部マーキング及び隊内名称はIMSIS(イムシス)とされている。

ジムの穴


「やーみんなよく来てくれた! 私が当第六ジムの穴の教官、ベゼル中尉だ。椅子に座って寛いでくれ、これから最初のレクチャーに移る。

皆も良く知る通り、ジムの穴は君たち優秀なパイロット…お世話じゃないぞ、ジムコマンドの受領が必要な人間というのはみんな優秀なんだ…そう、重ねて言うが、優秀なパイロットの皆さんにジムコマンドの乗り方を覚えて頂くトレーニングセンターなんだ。

恐らく君らの中には既にエースもいるだろう。もしかすると1日エース(一回、若しくは1日の戦闘で敵機3機を撃破)もいるかもしれないな! そんな君たちに何故トレーニングが必要かと言うビデオを見て貰おう…

さて…良い機動だね! ランダム機動も出来てるし、弾を見切る事も出来てる。ジムコマンドに乗せて正解だな!

で、ここだ。

何気ない予測射撃に対して反応し、急激な減速を掛ける。ジムコマンドは反応がジムより機敏だしこう言う挙動の時のスラスターの噴き上がりは見事なもんだ…そして彼は流れていく…そして撃墜される。

(パチンと映像を切る)

この機体のブラックボックスを回収してフライトデータを確認したところ、彼の操作はジムであれば全く問題が無いが、ジムコマンドで同じ操作をすると反転時のGがジムの際の8Gから1.5倍の12Gまで跳ね上がることが判明した。それでこの場合はブラックアウトして僅かなブラックアウトのタイミングで昇天と、まぁこんな話らしい。ジムに慣れていたが為にジムと同じような挙動を反射的に行ってしまったんだな…言いたい事は分かるだろうか?

そう、優秀なジム乗りでありジムを使いこなしていた人間程ジムコマンドでやらかしやすいんだ。

諸君が1〜5教習所ではなくこの第六ジムの穴に送られたのはそういう事だ。ジムを使いこなしていた優秀な諸君だからこそ徹底的に訓練をしてジムの乗り方を忘れてもらわなければならないし、第六卒業生という名札を付けて原隊に戻って貰う以上…ジムに慣れていた以上にジムコマンドに慣れてもらわねばならない。さらに言うと今まで4期ほどジムコマンドへの機種転換試験を行い、ニュービーだらけの1〜5穴でのジムコマテスト合格率は僅か14%! 残り76%はジムコマの受領を断念してもらっており、今我が軍にはジムが足りていない! 圧倒的にだ!

ジムコマンドが余りジムが足りないという我が軍の問題を根本的に対応する為、軍監本部から第六ジムの穴には「全員合格させろ」との非常に厳しい命が下っている…

バカな話だな。全員を合格というのは訓練ではなく教習だ。俺はへなちょこ野郎の免状にサインする気は無い!

しかし無碍に命令を断るのも軍人として看過出来ぬ故、優秀な諸君が万が一にも落伍する事は無いと信じるが…もし事ならずんば諸君が原隊に戻る際の乗り物はボールになる。君たちが乗って来たジムは今ウチの整備兵達が点検し、ファブリーズを吹きかけワックスを掛けて1〜5教習所での落伍者向けに出荷される事になっている。

ようこそ諸君。ここが「地獄のジムの穴」だ(ニヤリ)」

ざわ…ざわ…

「はーい注目! グンダ少尉です。なんかおっかない話されてましたけど大丈夫大丈夫! アサノ大隊出世の早道って言ってネ、第六ジムの穴で訓練するとみんなすぐ昇進できるよ! やったラッキー☆ おっとくー☆」

「なんと前期は3人も訓練中に昇進した! めでたいな!」

「それも一気に2階級ですからねー。さぁみんなスマイルスマイル!」

(凍り付く教習生たち。実際には訓練中死亡はイケても1階級しか上がらないと知っている古参兵はニヤニヤしながら場を見ている)

その後グンダ少尉による教官紹介とスケジュールの説明。

訓練は4週間合宿形式で行われ、操縦技術や戦術理論の座学だけに留まらず、筋トレ(特に下半身と首)や「慣れてもらう為の耐G訓練」など、半ば拷問のような課程もある。一応原隊で推薦を受ける程度には優秀な人材が送り込まれている事、教官であるアサノ大隊のメンバーによる度重なる人体実験により身体強化がかなりシステマチックかつ効果的に行われる事などが重なり、ジムコマンドの受領率は8割程度あるらしい。(尤も、高度な耐G能力が求められる宇宙型はその半分程度しか受領できないのだが!)

この様なパイロット育成上の問題もあり、MSのコクピットインテリアは急速にリニアシート形式に変換されパイロット負荷は低減していく。また、アサノ大隊では軽量高推力から装甲性能を引き上げて機体の慣性質量を上げ、あえて加速性能を落としたジムの開発提案が提出された。

合わせ目消し


近年の発明に合わせ目消しというのがある。昔もあるにはあったがそれは「接着して物理的な段差を消す」という話に過ぎず、最近のように左甚五郎がカンナがけした木材くっ付けたらぴったりくっついたみたいなエクストリームな話ではない。まぁ、全塗装が前提だったしな…

最近の合わせ目消しについては、成型色仕上げという組み立て形式が勃興した為に生まれた技法であり、正直「色塗れば良くない?」である。この技法はどーしても色を塗らず成型色を活かした作品を作りたくて、しかもそれが比較的古いHGとかのキットであった場合のみだろう…しかも、だ。この手のキットはスタイルがトンチキだったりするので改造したくなったりするのだが、成型色を活かすならキットのランナーとか使ってあちこち弄って、更に加工部合わせ目消すとか中々に狂った制作をする羽目になる。

逆に言えば合わせ目消しを極めたらあれこれ応用が効くと言えないこともないが、その割に技術の展開が割とこう…シンプルだなと。

プラ材を境目無くくっつける際に、一般的には接着を用いる。素材の接触面を接着材で溶かして着けると。溶かして着けると言えば、溶接なんてのもありますな。

私は大体普通のタミヤセメントと流し込み速乾性のセメントを併用し、更に油目の金ヤスリで「切削のプラ粉」が合わせ目に詰まった所で流し込みセメント塗って、成型色色のパテみたいなもんをその場で作りながら合わせ目消してる。(油目を使う理由は…まぁ、言うまでもないか)

割と今回、一般的に流布してるテクを継承するだけで「自分で工夫する」というのが無いのだなという点、そも「それ、やる必要あるか?(テクを駆使するシーンが極めて少ない)」という点が衝撃的ではあった。

うむぅ。

廉価版


ちょっと度し難い言説見たので癇癪起こして某SNS退会した。

平成も末の4月である。ジムの日という事でどこぞも急遽ジム特集をおっ始めたのだが、事もあろうにジムをガンダムの劣化版などと言い出したのだ。話にならない。

私はパソコン基板の製造会社に在籍していて商品企画なんかもしていた時期がある。その際高額な基板や廉価な製品も企画段階から見ているが、廉価にするというのは粗悪にするのとは違うのだ。場合によっては廉価にする方が極端に難しい。

実例を挙げよう。

パソコン基板の所謂マザーボードなんてのはチップセット販売時に基本的な基板設計が終わっており、特になんもしなければ基本設計をそのまま流用して基板を作ることが出来る。この際に生産性を上げる為に基本設計は可能な限り廉価な生産設備で簡易に生産できる様工夫が凝らされているのだが、要求仕様により基板のレイヤー(基板の配線層)は4〜6層程度にまとめられている。

が。

4総基板の一般的なM/Bサイズプリント基板は1000枚で単価800円ぐらい。6層基板で4000円ぐらいする。実は基板という板だけで篦棒に単価が違うのである。

さらに言うと実装機(SMT)での温度管理がシビアになり、不良率も若干上がる。私の在籍した会社ではある製品で12層基板製品を用いたが、なんと生産時の不良率は9割に跳ね上がり、外部の工場(高性能VGAはこのぐらいのレイヤー数になることが多く、専門工場で生産されている)に生産委託する事になった。不良率9割ってのは生産原価10倍というアホな話になるのである。

確かにレイヤー数の大きな基板は複雑で設計にも難しい点があるが、結果的に高額であるという事は高級であると言う事ではない。単純に機能が多いとかそういう話である。例えばその会社はAMD CPUを8個搭載し、インフィニバンドでメモリや低速度I/Oに接続する化け物基板を生産してた事があるが、それは高級なのではなく機能を積み重ねていったら高額になったというだけの話。

逆に低廉な製品の話もしておこう。

業界トップメーカーとして名高いA社はインテルが配慮した6層基板設計を自社の生産設備に合わせて4層基板に作り変えることがある。勿論インテル側も4層までレイヤー数を落とした設計をすることもできるのだが、メモリーの信号線(64bitパラレルなんで信号線だけで64本もある!)の等長とか頑張らないといかんので、設計難しくして生産性を落とさぬ様6層にしているのである。それを「自分たちは再設計できるし生産設備も対応している、だからコストダウンのために4層にする」で勝手に彼らは自分でコストダウンしているのである!

コストというのはこの様に技術と密接に絡んでいるので高額=高級ではないし、廉価=低技術レベルという訳ではない。マツダはデミオで手を抜きアクセラで本気出していると考える人はいまい。どちらも本気で設計し、本気で低廉化を狙っている。ただ求めるものや仕様が異なるのである。

例えばガンダムにはコアファイターが搭載され、ジムには搭載されてない。必要な機能が省かれ、劣化したのだろうか? …コアファイターが脱出用の機械として利用されたのラストシューティング後しか無くないか? スレッガーさんは何故映画版でコアファイター切り離して脱出せんかったのか。

脱出機としてはほとんど無駄だったのではあるまいか。世間ではこう言うのは高級とは言わず過剰という。

90式戦車にはエアコンが付いているが、これは高級機だからだろうか?

NBC兵器対策でエアフィルターなどを充実させた結果だと聞いているが。

そこに戦略があり戦術が選択され、その結果としてジムが量産されたのである。ガンダムは一説によるとジム20台分の生産単価だと言う話だが、それだけの高額機体でもセイラが乗れば微妙な戦力になるし、ぶっちゃけアムロが乗らなきゃ多分ガンダムはジャブロー辺りで擱座するのが関の山ではないか。高額なだけでジム20台分の戦力になるかと問われれば「無理じゃないかなぁ」と言わざるを得ない。

なんかキュピンキュピンしちゃう人間が乗れば悪魔になるが、そうでなければそーでもないという機体は、軍隊という「組織で戦う場所」には適合しない。無駄な機能や無駄な出力を搭載して無駄に高額化したガンダムは高級ではなく「過剰」であり、過剰を使い切る事が出来たのはアムロさんみたいな極端な人材がたまたまガンダム乗ったからであり、言っちゃなんだが「御都合主義」に過ぎない。

ガンダムが高級ではなく過剰であるならば、ジムは劣化ガンダムではなく連邦軍主力機として選定された「適切な」MSである。

そも、ガンダムが性能的に適切であり、高級機揃えたら戦争勝つならば…ゲルググ量産したジオンに勝てるわきゃーない。