「どんな感じだ?」
B.ロックが戦技研究班を訪ねたのは夜半の事。主任のベゼル曹長とグンダ軍曹は頭を抱えていた。
「どうもこうもありませんな、ありゃ機体がまず化け物ですわ」
「機体バランス、質量配置辺りから見るとSP系フレームから弄ってますね。ただ推力や瞬間トルクが大き過ぎます。計測では最大15〜20Gぐらいかけることができるみたいで普通ならそのまま赤か黒(レッドアウト/ブラックアウト)でおやすみーですよ副長」
「なんかサブプログラムでも積みましたかね? ほら、ここ…」
「ベゼルとーちゃんが見つけたんですが、これ…ここで右下のジムの接近感知できてないんですよ、意識が完全に前方2個小隊に向いてます」
「で、これスわ。後ろにでも目が付いてるのか、弾出した瞬間に回避が始まってます。コマ数から見て多分3〜4(1/20〜1/15秒程度)フレームで動いてます」
「グンダさん予測では同時処理可能数5〜6程度なのに、致命的な所では処理数倍化してますねー。アムロさんの動きに近いと言いますか、二人乗りで片方が全周監視してる感じ?」
「タンデムしてるとしたら、相当訓練してますな。えーっと12:58からか…ここの動きですが…」
「またアンブッシュ成功してるんですが、上手いこと前に長槍が動き出す瞬間に弾撃ってンですけどね、ここで盾動かすじゃないですか、直前まで気付いてないでしょこいつ、なのに盾が動いてバランスが崩れるのをちゃんとフォローして態勢直してます。そして攻撃優先順位変更」
「メインパイロットとコ・パイか、サブプログラムで致命打を割り込み回避させてますね。そしてメイン側がその動きに慣れてる。乗りこなしてるっていうか、勝手な動きをすぐフォローしてるっていうか…」
B.ロックの顔は渋い。
「倒せるか? これ」
「できないことは無いと思いますがね、中隊規模なら確実に」
「ミサイル乱射しつつ処理能力飽和させて損害覚悟ならなんとか1個小隊、出来たら2個ですねー。こいつ1機だけならですよ? キルレシオはウチの手練れで1:5〜1:3ぐらいですかねぇ…ちょっと相手したく無いですねー…でもこれ、ジオンに鹵獲されたとかそんな話なんです? 動きのパターンからしてこれオーガスタの変態チームでしょ?」
「まー、こんなパイロットをミキサーの中に叩き込むような真似はオーガスタでしょうなぁ。一度あいつらに人権ってもん教えた方がいいですよ。戦場でパイロットが気絶したら救急車より先に鉛玉飛んでくるんだよと」
「気絶するならコ・パイも同時にちーん♪でしょうから、サブプログラムですかねぇ。でも急制動かけた後も人間味があるんで、なんでかこのパイロット、耐性があるんでしょうねぇ…」
戦技研の解析はなかなかの精度だった。念の為セタガヤ機関に探らせた調査報告でも「人体の科学的強化とサブ制御プログラムHADESによる超兵器」と結論が出ているし、補足で一部連邦軍内急進派が人体実験をしているというデータが提示されていた。恐らくレビル派だろう。
「やらずに済むなら嬉しいが、どうにも意図が不明だ。対策を練っておいてくれ。秘匿名はペイルライダーだ」
「ぉぅぃぇ、黙示録の騎士ですか…」
「あ、あたし分かっちゃった。ネーミングで分かっちゃった。これグレイブ閣下のトコの機体でしょ!」(ビシィッ)
「な、何でだグンダ?」
「ネーミングがダサい! 大仰過ぎ! しかも黙示録の騎士4番目大トリ! アレだわー、グワハハハッて閣下の笑い声まで聞こえてきましたわー、まぁた悪いこと考えてんでしょこの人」
「いや、グワハハハッはしらんが…」
「まーあ間違いないですわー、人体実験とかってコレ用?」
「おい、グンダ軍曹。それどっから…」
「4chのオーストラリア難民版で有名ですよその話。難民の孤児集めてなんかしてるって。ロリばかり集めてるって話がショタも集めててロリ&ショタのバイとは救えんな…みたいな話だったのが、もうヤダ人体改造なんて…って話で大炎上! すぐ書き込み消されましたけど、消したら増えるんだなぁ、ネットって…」
「あー、一時期見てたな、とーちゃんかーちゃんの安否確認で。シドニーだっけ?」
「どこに近いかと言えばシドニーだけど、牧場だもん…野っ原ですわ。ご近所さんディンゴやカンガルーばっか」
「3等機密だから本当は話しちゃいかんのだが…特に4chとか辞めろよ…お医者さんが腰抜いて椅子から転げ落ちる人体改造ってのはマジらしい。ウチの上層部から「場合によっては」オーガスタをアレするって話がもう出てる」
「「マジすか?」」
「そのデータも外に出たらあっという間に俺らが出所だと分かる細工されてるとみた方がいい。俺らにそれ回ってきたって理由は分かるよな?」
「あ、やるんだ。やらされんだ俺ら」
「コマンド系配備進んでたらいいけど、素ジムちゃんでやるのはヤだなぁ…」
「あくまで候補だ。ちょっと今微妙だからどうなるか分からん。だから現状戦力から少し先の配備計画まで俯瞰して攻略法考えてくれ」
「これ、何機あるんです?」
「4騎士だから4台だろ。分かりやすいなw ただ、オーガスタへの資材移動からして量産の可能性はあるらしい」
「グンダ、ロリショタの話では何人ぐらい捕まった事になってるんだ?」
「日本に行った話もあるらしいですー ムラサメ研じゃないかな? 合計で10名前後。確か学校で林間学校だかのキャンプしてた子らの半分ぐらいがって話だから、Max20名とかじゃないかな?」
「え? 学校?」
「小学校らしいですよ、ロリショタにしてもごっついな!って話だったし、しかもそれで人体実験。そらぁ今すぐ核落とせとか言われますわー」
「これ10機キッツイなぁ…接続部とか細いけどガンダリウムっしょ、これ…」
「バンマスみたいな統制砲撃システムで飽和ですなぁ。どんくらいのスピードまで対応可能なんだろ…」
「最悪新兵器開発もできる。とりあえず条件抽出してくれ。ジオンだって似た事したり、似た機体作るかもしらん。戦術の転用も上は視野に入れてる」
「うーん、気がすすまない。少年十字軍ですか」
「私もでかい事言えないけど、弟妹年代に弾当てるのやだなー…」
資料を前にして殺される事より殺してしまう事を心配するあたりが頼もしくはある。しかし…楽ではあるまいよ…