今回数十年ぶりにガンプラに手を出した訳だけど、私がまだプラモ作ってた頃(20代前半)からは長足の進化を遂げているという話自体は聞いていた。
曰く・・・・
接着剤不要、色塗りしないでも見栄えのするモデル。
関節などの構成が見直され、非常に可動域が広い。
色プラでの多色成形技術が進化している
昨夜2時間程度で素組をしたのだが、確かにこりゃすごい。
凄いが・・・・驚かされたのはそれだけでは無かった。
![ガンダムの顔](https://wildcatfactory.wordpress.com/wp-content/uploads/2013/10/e382ace383b3e38380e383a0e381aee9a194.jpg?w=652)
上図はどっかから引っ張ってきた最近のガンダムの顔の部分なのだが、昔は首は左右へのパンだけの可動軸で、首と顔は一体になっていた。角以外のパーツは前後で2分割されており、その分割形式により設定画とは異なる横顔になっていたのだ。
「少なくとも昔は」、ガンプラのパーツって上下二分割された金型の間に溶けたプラを流し込んで作る「射出成型」と呼ばれる方式で作られていた。この際、型を後から剥がさなければいけない関係上、成形するモデルには逆テーパーが存在できなかったのである。
この為、ランナーの作り出す「平面」に対し、垂直方向の面に対しては精細な彫刻が出来るが、側面部分の彫刻は「逆テーパーにならない様に」施さざるを得ず、結果的にヌルい筋彫りや浅い筋彫りが刻まれる事になっていたのである。
そんな訳で、昔の1/144ガンダムの顔ってこんな感じだった。
あごの部分から見て行こう。顎は一体成型だったので今のモデルの様に裏側を斜めにする事が出来ず、青い部分が喉の部分に直結していた。もしも今のモデルと同じ様に顎を成形すると、キットが型から外れなくなってしまうのだ。また、ヘルメット部分の下端も今の様に山形にはなっておらず、頬の部分で垂直に下りて来て、右斜め下のラインを作ったらそのまま(ほぼ)水平方向にすーっとラインが引かれ、メットの後ろの部分で耳(?)部分の出っ張りに統合される様な、そんな造型だったのだ。だからマニアは青い部分を削り取り、赤い部分を削って滑らかなラインにする事から始めたのであった。無論首は別パーツとして作り直しで、更に可動軸を仕込んで上向いたりした向いたりできるようにするのが嗜みである。(嘘だと思ったらMSVのFA-78買ってみれ。プロトタイプガンダムとかでも良いぞ。今ならラーメン一杯食う値段でお釣り来るくらい安くなってる)
昔のモデルはこんな感じで「型で抜く以上、仕方のないデザインの変更」があちこちにあった。ガンダムの襟の部分、黄色のパーツのフチも本来の設定画では前の方までフチが付いているのだけど、1/144ガンダムMk-II辺りまでは確実に最上部の部分にしか襟は立っていなかった。
その他、設定画通りに関節作ると事が出来ずガンダムMk-IIのくるぶしの関節位置は設定と異なる位置に設けられていた(本来内部フレームと解釈されるべきパーツが脛の装甲板の一部と解釈されて、そこから関節の軸が伸びていた *1)
これは生産上仕方のない事という訳で、その辺の「立体化の際に省略/解釈の変更をされた部分」を如何に設定画に忠実に作り直すかというのが、ガンプラ少年が改造に乗り出す第一歩だった訳だ。他人の作品を見てラインの取り方を学んだり、設定画とにらめっこして「設定に合致する方向で」細部を作りなおしたり、或いは面の解釈の違いを「自分の望む方向に」戻す為に面の出し方、角度、ボリュームを変更したりすると。格好良いポーズを取らせる為に関節の改造や可動軸の追加なんかもやった気がする。
昨今のモデルを見た感じだと・・・・この立体化する際の技術的問題で解釈を変えた部分が驚くほど少なくなっている。ガンダムの足首から脛にかけての構造も、昔のMk-IIで顕在化していた問題(足首側に油圧パイプの様な物を付けてしまった結果、本来脛の方向と同じ向きに伸びるべきパイプが脛の向きと関係無い方向に向いてしまっている/足首の出す水平面に対して一定の角度を出す形になってしまっている)が改善されている。
ああ、なんか凄い。
設定画にある程度忠実なガンダムがそこにある。
これだったら以前は最初に行っていた「設定画との齟齬を潰す」作業そのものが要らなくなる。
その設定画に極めて近い成形をしている秘密はどのへんかを考えると、その答えは恐らく今回のHGガンダムの肩部装甲パーツにあると思う。
これ、何の気なしに一パーツで成形されているのだけど、上下二分割の型じゃこの部品一発成型できないのよ。
じっとランナーを見る・・・・
肩のパーツの付いている所を良く見ると、外周部に当たるランナーが無いのである。これは何を意味するかというと、上下二分割の型で挟むだけではなく、横からぴったりと肩の内側を成形する型を挟み込んでいる・・・・つまり型が上下二分割ではなくもっと複雑に分割されているという事だ! 恐らくはビームサーベルのビーム出す部分も何かの彫刻が施されているのではあるまいか?
プラ部品のインジェクション(射出成型)では、高圧で溶けたプラを流し込む関係上、凄い力で型を押し固めるという。上下二分割にするのは上からぎゅーーーーっと押して型を押さえる為の方策である筈なのだが、複数の型に分割した場合は上下左右から型をしっかり抑え込む事が必要になるので、成形コストがかさむ事になる筈なのだが・・・・
こんな風に考えてキットを見た場合、型からの作成でどんな部分が問題点で、どの様にすれば解消できて、どんな風にパーツ分割したら綺麗にモールドを出せるかという部分をなんかもー熟考しまくってキット作ってる様が瞼の裏に浮かんでくるようである。
*1 1/144のガンダムマーク2 旧キットの側面図を見てみよう
足首関節の軸がこんな高い所にあるというのがそもそもの問題としてアレなのだが、脛の装甲板と一体になったこの軸の付いているパーツ、本来は脚部内部構造の装甲板なのよ!
近年のMk-IIだとちゃんと解釈されているが、Mk-IIはフレームに装甲を付けているという設定であり、内部フレームの足首関節を可動/保持する為のピストンというか油圧シリンダーが仕込まれている訳だ。油圧シリンダーの可動部は足首側になる筈で、脛アーマーの縦軸方向とシリンダーは正面から見て垂直に伸びる筈なんです。
所が旧キットではシリンダーを足首側のモールドにしてしまった為にフレーム構造はどーなった? って突っ込み以前にシリンダーがどこにくっついてどう動いてるのかが皆目見当のつかない構成になってしまっていると。
この方もやっておられるが、足首~スネの構造変更は旧キット最大の難所であった。そもそも立体解釈が設定画とまるで違うんだもん(涙) 私も同じように各部バラして伸ばして縮めて作り直しての大運動会をする羽目になった物である。